本の日記

「なぜ君は絶望と闘えたのか 本村洋の3300日」
著者 門田隆将
1999年に山口県光市で起こった母子殺害事件のことが描かれています。
この事件の裁判が行われて、第1審の判決が下ったときのニュースで、
本村さんが、被告人が死刑にならないならこの手で殺すというような
内容のコメントを出されていたことが、印象に残っています。

被害者遺族の方々の権利が、今までは注目すらされていなかったことが、
この事件をきっかけに、司法や行政が、犯罪被害者の立場を見直すことになりました。

全国犯罪被害者の会(あすの会)という団体は2018年6月をもって解散しましたが、
社会に短期間で大きな遺産を残しました。

法律は、今までの英知を結集したものですが、それで終わりではなく、
時代とともに進化していかなくてはいけないのだろうと感じました。
問題の本質を見抜くためには、ステレオタイプにならず、多角的な視点と、
倫理観や道徳観を合わせて物事を見なければいけないなと思わせる本でした。


平成30年7月19日
「火星に住むつもりかい?LIFE ON MARS?」
著者 伊坂幸太郎
物語は魔女狩りの話から始まり、国家権力や社会の力が、
実はとてつもなく、怖ろしく強大な力であることを感じさせられます。
インターネットにより、隅々まで監視し、監視される現代社会で、
どうしようもない現実が突き付けられるが、その中で希望の光として、
フルフェイスのヘルメットを被った黒ずくめの一人の人物が、警察権力に立ち向かう。

伊坂幸太郎氏の作品の特徴である、「暗い中での一筋の光」「何度も展開する物語」
を十分に堪能できる作品となっています。

現実ではないのかもしれないけれど、少し考えさせられるような、
何か大切なものがそこにはあるような気がするけど、実はそこまで深くないような…

「モダンタイムス」「ゴールデンスランバー」にも通じる世界観で、
新たなストーリーで表現されているようにも感じました。
引き付ける構成は流石で、読後感も何とも言えない清々(すがすが)しさがあります。


平成30年7月26日
「論語一語」
著者 長尾剛
6〜7年位前に「論語」ブームがあったとおぼろげながら記憶しています。
今回改めて読んだのは、自戒の念が生じたため、「何かヒントを」と求めるような気持ちで
この本を取りました。
時代を超えて、この本が受け継がれているのは、その時々の読者に何らか道しるべを示してくれる、
それが永く読まれる名著なのだろうと勝手に感心しました。
「これは人生哲学の教科書だ!」と宣言されても、異論ございません。

「論語」は、孔子の言葉を弟子達がまとめたものです。「論語」本体は、全二十編からなるものです。
「論語一語」は、著者が「論語」の言葉を選び、訳して意味を補足して、
わかりやすいように編集されて、とても読みやすいと思います。

「聖書に並ぶベストセラー」とこの本の帯に書かれています。自分は特定の信教はありませんが、
キリスト教でいう「聖書(バイブル)」とは、自分の価値観を再確認したり、
平衡感覚を保つための物だとすれば、信じる宗教がある人の気持ちが、少しわかったような気もします。

行政書士の試験勉強をしたときに「宥恕する」という言葉が出てきました。
論語の衛霊公の編で、「其れ恕か。己の欲せざる所 人に施すこと勿れ」とあります。
「恕」の意味は「思いやり」、今も昔も、人が生きる世で大切にすることは同じですね。


平成30年8月1日
「キャプテンサンダーボルト」
阿部和重 伊坂幸太郎 共著
発売してからしばらく経ちますが、まだ読めていません。
書評や耳にする評判では、かなりの高評価なので、早ければお盆にでも
買って読破したいと思います。


平成30年8月6日
「青梅雨」
著者 永井龍男 
手帳に書いていた、「いつか読もうリスト」としてメモしていた本で、
どういった経緯でこの作品をリストアップしていたのかも記憶になく…
これを機に、本屋さんに行ったときに思い出せるはず。


平成30年8月6日
「地層のきほん」
目代邦康 笹岡美穂 著
最近、北九州市のいのちのたび館というところに行きました。
地球の歴史を展示している博物館ですが、その影響でこの本を読んでみました。
イラスト入りで、わかりやすく解説しているシリーズのようで、読みやすかったです。

地層は、地球の歴史をひもとく重要な手がかりであり、地球が活動していることを物語る証左です。
46億年の中では、人間の歴史なんて、ほんの一時ですが、そんな短い時間で、
地球の歴史にないことを人間が行っているという事実を改めて考えさせられます。

地層学は地球の営みを科学的に語り、人はそれをどのように活かすのか、
大きな命題をこれからどうしようかと、大それたことを思いました。
また、古事記の神話の中で、国生みの話があり、プレートのひずみが出来て、島ができる話は
まさにそれであり、地球の活動は、人類に恩恵を与えたり、
時には、とても残酷な災害をもたらすこともあり、
地球の所業が、神の所業とも言えるのでは、地球という存在が神ではないかと。
何でも繋げたくなるのは、思考の癖ですが、地層のことに興味がわきました。

平成30年8月20日
「タダより高いものはない」
上念司 著
日本の経済をわかりやすく、楽しく、読みやすく解説しています。
日本郵政の話がとても印象に残っています。
今でも、実質的な民営化は、道半ばであり、迷走をしている…という印象です。
市中銀行に対しては、バブル期からリーマンショックによる後遺症が残ったままなのか。
といった感を受けます。

当時の日本銀行のデフレ時代の脱却政策も、金融引き締めはなぜだろう?と今となっては思いました。
小泉進次郎氏のこども保険に対する評価も、そもそも「保険」というものは…
そして、子どもに対する「投資」の重要な意味…
良く咀嚼して、理解を深めなければと思う部分が多々ありました。

自分は経済学に明るくありませんので、これから色々と勉強していきます。
経済学も面白い!と思えた本でした。

平成30年10月27日
「ホワイトラビット」
伊坂幸太郎 著
寒くなってきたので、ふさわしい本を…ということではありませんが、
何気なく自分の本棚から取った本がこれでした。購入した時に読んでいますが、そのとき以来でした。
読んだ後に、「ホワイトラビット」という題名は、冬っぽいなと思い、出版日を見ると
9月とあり、「そうか、秋の季節の本なのか」と思い直しました。

宮城県仙台市の立てこもり事件の別名が「白兎事件」といいますが、一般的ではなく、
語り手が、ある人物の名前を言い換えて、そのように名付けているようです。
この作品は、語り手が特徴的です。登場人物の会話が面白いのはもちろんですが、
語り手のストーリーとの距離感、語り口調がとても際立っています。
頻出する「レ・ミゼラブル」を読んでみようかなと、書店で本を手に取りましたが、
あまりの分厚さに、「棚が寂しくなって、売上が落ちると大変だ」と思い、もとに戻しておきました。

伊坂作品は、多様な知識が散りばめられており、いつも新たな発見があります。
物語の構成、個性的キャラクターなど、毎度楽しませてくれます。

平成30年12月9日
「フーガはユーガ」
伊坂幸太郎 著
2019本屋大賞ノミネートされている作品です。
双子の物語で、どうしようもな位悪い父が登場します。
読み終えた後、しばらくして「重力ピエロ」に似ているなと思いました。
「兄弟の物語」、「悪者の父」などが共通しています。

双子の兄である優我が、ファミリーレストランで自分の人生を語るところから
始まっており、現実はその場所での語りがほとんどの時間になっています。
散りばめられた伏線を回収していくのが、伊坂作品の特徴ですが、
この作品もそれが、遺憾なく発揮されています。
後半部分のスパート感と、最後の最後まで超能力への期待を持たせる書き方は
流石です。

青春小説であるながら、エンターテイメントであり、ミステリーでもあり…
「切ない感じ」が好きな自分がいることを改めて確認しました。

平成31年2月12日
「世界史の極意」
佐藤優 著
佐藤優氏の著書は気になっていたので読みたいなと思っていました。
世界史のエッセンスが語られ、「宗教」と「歴史観」を中心に
アナロジカル(類比)の思考過程が丁寧に説明されています。

著者は「大きな物語」的な歴史の捉え方を危惧しています。
歴史を一般的な個の立場から読み解く視点を持つべきという考え方に
立っているように感じました。
右に傾き過ぎている天秤を均衡に保とうとしている印象です。
ニュースで流れている事象を一面的な見方だけではいけないなと、
各国の成り立ちや歴史観が背景にあり、単純ではないんだと。

知性的な視点でそれぞれの国の歴史をひも解くことは、
他国の人々を理解する上でとても有用だと思われます。
この本で紹介された、イギリスの歴史教科書「帝国の衝撃」は、
是非一読してみたいと思います。

平成31年3月18日
「死の淵を見た男」
門田隆将 著
東日本大震災が起こり、そして福島第一原発の建屋が爆発する
映像を見たのは、もう8年前。まだはっきりと映像の記憶が
思い出されます。人災とも言われる原発事故で何があったのか
現場の人達は、どんな思いでどのような行動を取ったのか

この本で語られている現場の状況は想像を絶するものでした。
危険を承知の上で、使命感、愛国心、家族や故郷を思う気持ち、
彼らを突き動かしたものは何かは明確ではありません。
ただ、著者も語っているが、現場の人達の行動は、
先の戦争で祖国のために散っていった多くの英霊たちの精神性を
日本人が受け継いでいるのだと思わずにはいられない。

それと同時に原子力発電の恐ろしさを考えさせられます。
具体的には、放射性物質の恐ろしさ、目に見えない怖さであり、
また一方では、それを扱う人間の油断、危機管理意識の欠如の
怖さであると思います。


令和元年5月8日
「DEATH 死とは何か」
シェリー・ケーガン著 柴田裕之訳
新聞の広告欄で見たキャッチコピーに惹かれ、
「これは読んでみたい!」と思いました。
人は生まれてきたからには必ず死ぬことは、わかってはいるけれど
真正面から向き合って考えることは、自分としてはあまり無く
死について、思考を巡らして考える良いきっかけになりました。

哲学的思考力を要求される本だと思います。
もともとは、イェール大学の人気講義で、翻訳にするにあたり、
内容を縮約しているようです。原著はもっと長いようです。
それでも内容は十分で、イェール大学に行かなくても
講義を受けられるのは、お得だなと思います。

西洋的な死についての考察という感じもしますが、
日本人にも通じる共通の考え方もあります。
生を際立たせるのは死であり、又反対も然り。
この本を読んで、得た死に対する印象を誤解を恐れずに言うと、
「死は悪いものではない」

令和元年7月26日
「逆説の日本史 24明治躍進編」
井沢元彦著

題名の「逆」という字のつながりから、ひとつ言わせてもらうと
義務教育の歴史の教え方は、近現代史から
遡っていく順序の方が良いのではと思います。
今を生きる自分たちの時代を見たとき、何百年も前の事よりも
3、4世代前の時代の事の方が、より深く関わっており、
現実味があり、興味を持つのではないかな、と思います。

「歴史教育の一大転換を」という公約を掲げ、選挙に出れば…
「歴史的大敗」という新聞記事が目に浮かびます。
これは個人的な意見で、この本とは別の次元の話ですね。

歴史は、起こった事実のみでは理解するのが難しいところもあり
当時の思想、社会情勢をどのように見るかも重要です。
朱子学という思想がどのようなものなのか、新たな勉強の素材が
見つかりました。

令和元年8月16日
「百年に一度の危機から日本経済を救う会議」
橋洋一、長谷川幸洋著

平成21年の本で、自民党の福田政権の時代の本です。
お二方共リフレ派で、リフレ派を支持する
自分としては、読みやすい本でした。
また、両者の対談形式も良かったです。

道州制の議論は、当時の自分がそこまで興味がなかったせいか、
この本で書かれている深い部分を知りませんでした。
補完性原則や財政審の実態、更問い、トリレンマなど
勉強になるな〜と思いました。


令和2年2月3日